2013.04.19 Friday
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別館
おせっかい
ジャケット写真でAmazonにリンクしているものは購入ページに飛べます。以前は日本のAmazonの輸入盤価格は、犬や塔 に対していまひとつ価格競争力に問題がありましたが、最近はかなり下がってきています。更にマーケットプレイスで海外の業者(カリフォルニア州とか英国ジャージー島あたりに登記された業者などから届けられます。)から取り寄せることが出来るようになり、ものによっては犬や塔よりかなり安く入手出来るものもあります。だいたい1〜2週間で到着する(日本での配達はJP)し、今までトラブルはありませんでした。
ちなみに、アメリカ盤はそこそこのようです。アイテムによっては直接、米Amazonから取り寄せると更に安くなることがある(品数にもよります)ので、興味ある方は .com の方も検索してみてください。私の場合、安い運賃の発送でも2週間強で到着しています。英独仏それぞれのAmazonも、他の国に無い独自アイテムがあったりして楽しめます。仏、西あたりだとFnacという手も。なお、品切れで中古の出品者が少ないアイテムは「あり得ない」値付けになっていることもあり、ご注意の程。
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2007.09.25 Tuesday 10:22
スコットランドの島唄
Julie Fowlis : Cuilidh (Spit & Polish SPIT032)
スコットランドというとハイランド地方のイメージが強いけれど、ヘブリディーズ諸島も忘れてはならない。Skye Boat Songで有名なスカイ島やメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」の舞台があるのが、インナー・ヘブリディーズ。その北西側にあるいくつかの島々がアウター・ヘブリディーズ。Google Earthで「降りて」みると、僻地マニアの血が騒ぎそうな光景が想像される。そう言えば、欧州に行くのにPolar Routeがあった頃、空の上からこの島々を眺めたことがあった。
吸い込まれそうな瞳が印象的な、Julie Fowlis は、アウター・ヘブリディーズの北ウィスト島の出身。航空写真で見ても家の数が数えられるんじゃないかと言うくらい人口密度の少なそうな島である。スコットランド各地のメンバーを集めた Dochas というグループで人気を博し、この Cuilidh は2007年に出た、ソロ第2作。カバーに書いてあるように、treasury とか sanctuary といった意味のゲール語らしい。
全てゲール語で歌われる歌は素直でトラディショナルな味わいと新鮮な仕上がりが良い塩梅。バックもアコースティック楽器だけのアンサンブルでありながら、アレンジ含めてこちらもフレッシュな響き。人気が出ると大勢の観客に届くように(かどうかわからないが)電気楽器を多用し始め、それが音楽のスタイルも変えていくという道を辿るミュージシャンが多い中、こんな風にアンプラグドのまま行ってくれれば有難いのだけれど。
何と言っても、何の押し付けも気負いも飾り気も無く、こぼれ落ちるように紡ぎだされるこれらの歌との出合いに静かに感謝したいという気持ちになる。
Julie Fowlis 公式サイト
Dochas 公式サイト
Julie Fowlis : mar a tha mo chridhe (SPIT031)
こちらが2年前のソロ第1作。多くの場合ジャケ買いは後悔と怨嗟をもたらすが、この2枚だけは幸運の女神に感謝することであろう。無理に比べると新作の方がいろいろな要素の溶け合い方がちょっと深まったような気がしないでもないが、基本的には全く同じ路線。そもそも円熟ということはあり得ないのだ。紡がれては消えていくような歌なのだから。
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2007.09.23 Sunday 15:30
ナナ・ムスクーリの英国民謡集
Nana Mouskouri: Songs of the British Isles (Philips 838 737-2)
このアルバムがCD復刻されて現役であるというのは嬉しい。LPでは1976年のリリースで日本盤もあり、発売当時、TBSの朝番組「おはよう700」(五木田武信と見城美枝子の司会)の海外レポートで紹介されたりしていた。
ある意味リトマス試験紙みたいなアルバムであり、純粋にフォークソングが好きな人が聴いたら、単にファミリー向けの綺麗なメロディ集だと切り捨てるかも知れない。発売当時、日比谷の図書館で借りてカセットに録音して何度も聴いていた私でも、今では、必ずしも没入して聴けるものでもない。しかし、ナナ・ムスクーリ、このギリシャ出身で、お国もののギリシャ歌謡はもちろん、シャンソンからラテン、そしてスタンダード・ナンバーまで歌いこなす不世出の歌手(ポピュラー音楽のマリア・カラスと呼ばれて・・・はいない)がイギリス民謡を歌った唯一のアルバムは、「ご当地ソング」を超えたユニバーサルな魅力を獲得していると言えないことも無い。
何と、このアルバムを出した1976年、ナナ・ムスクーリは他に11枚のオリジナル・アルバムをリリースしているのだ。月1枚である。ドイツ語やオランダ語による歌唱のアルバムもある。76年は彼女のレコーディングが最も多産な年だったようだ。
LPの資料が無いので不正確だが、曲順はCD化で変わったような気もする。He moved through the fair はあまたの歌手が歌っており、ナナの歌は優等生的に過ぎるとも感じられる。Danny Boyはこんなものか。O Waly Waly や Skye Boat Song あたりを、泥臭くなく聴かせるあたりが彼女の真骨頂か。一番好ましいのは、かわいらしい An English Country Garden である。パーシー・グレインジャーも室内楽用に編曲を残しているこの佳品が歌で聴けるのは楽しい。
2007.09.21 Friday 09:48
どぶろくのカクテル
Mark Knopfler & Emmylou Harris : ALL THE ROADRUNNING (Warner 44154-2)
マーク・ノップラーとエミルー・ハリスのデュエット・アルバム? うわぁ、是非聴いてみたい、ポチっ。
で、届きました。じんわりダウナー系のマーク・ノップラーの声と磨かれたテンションのエミルー・ハリスの声の絡み合いは実に聴きもの。そして、マークのギターがもう絶妙としか言いようがない。曲作りは殆どマークで、エミルー・ハリスは2曲。道場破りのカントリー・ミュージック。
いま一つ気がのらない日のドライブのお供にどうぞ。あるいは、よごれちまった日常生活を終えたひと時に。変な癒し系なんかに手を出すより、どぶろくのカクテルを飲むようにこのCDを聴くほうが、その後ぐっすり眠って気分爽快になれるかも、です。
Mark Knopfler & Emmylou Harris : Real Live Roadrunning
ライブ盤も出ていたのですか。しかも全曲DVD付き。また、ポチか・・・
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2007.09.20 Thursday 11:33
音楽で香を焚く
Tournemire: 2 Offices de "L'Orgue Mystique" - Wilson (Solstice SOCD148)
癒し系音楽と呼ばれるものは、だいたい便所の芳香剤のような押しつけがましいものが多い。ストレサーばかりの現代では血で血を洗うように癒されなければならないのだ。
中にはポプリを部屋に置くように、かそけき上質の芳香音楽もあるだろう。そういうのならば聴いてみたい。
トゥルヌミールのオルガンの曲を聴くと、まるで香を焚いているような気がすることがある。
中古屋の特売で手にした、この「神秘のオルガン」から2つの礼拝分を収めたディスクは、シャルトル大聖堂のオルガンによる演奏。グレゴリオ聖歌の世界をオルガンで表現したような感じで、もちろんこの楽器ならではのダイナミックな曲もあるが、多くは静謐な聖堂にステンドグラスを通じて入ってくる光のような、冷やりとした色彩感に満ちた音楽。心を酔わせたり激しく動かしたりせず、ふと入り込んだ教会堂の空気の中で偶然鳴り始めたような響き。だが、一度、その響きが耳に入って来たら、最後まで自分の手で止めることが出来なくなってしまうような不思議な音楽だ。
全曲(250曲以上あるのです!)を聴くなら、12枚組の Delvallee による全集(Accord)がHMVなどで現役。1万円程度なので無くならないうちにどうぞ。
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2007.09.19 Wednesday 11:47
雲の工場
June Tabor : at the woods's heart (TOPIC TSCD557)
ジューン・テイバーが2005年に発表した At the Wood's Heart は、古いバラッドを集めた前作とは異なり、通常の伝承歌や創作フォークを集めたもの。彼女の声の色調も、やや明るめというか軽めになり、そのあたりに不満を感じるリスナーもいるようだ。前作の、人間がいかんともし難くしかし確実に我々自身の中にある暗い力を遠くから呼ぶような凄味は、ここでは感じられない。
沈黙すれすれの静けさが支配する。デューク・エリントンを歌っても、だ。
そして、最後から2番目の The Cloud Factory を聴くとも無しに聴きながら、図らずも落涙してしまった。かくもちっぽけで儚く、ただそこにあることだけが存在理由であるような人間の歌こそが、全ての人間の歌である。Bill Caddick が自身の父親の死について作ったということだ。Guardian紙のコンサート評によれば、多くの聴衆がジューンが歌うこの歌に涙したらしい。2006年のBBC2 Folk Awards の Best Original Song ノミネートされたが、惜しくも2位。この曲を聴くためだけでも価値のある1枚。
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2007.09.18 Tuesday 14:25
世も末ソングの伝統
June Tabor : An Echo of Hooves (Topic TSCD543)
コンスタントに新作を発表しているイギリスのフォーク・シンガー、ジューン・テイバーが2003年に発表したアルバム。最近の彼女のアルバムはひとつひとつテーマを持たせてある。ここでは、バラッド。The border widow's lament 以外は全て Francis J. Child が19世紀末に編纂した、いわゆる Child Ballad に基づいている。そしてセシル・シャープが蒐集したメロディなども含まれる。CDのスリーブノートでは字が小さすぎるのだが、いくつかの曲には背景についての簡潔な説明が付されている。詳しくは、Wikipediaの Child Ballads とそのリストからそれぞれの歌のシノプシスにリンクされている説明も参考になる。
歌詞や背景に思いをやらず、ただ vocal music としてだけ聴いたらどうだろうか。それでも、ただならぬ状況が歌われているのではないかと言う雰囲気は全てのトラックからビシバシと伝わって来るのだ。これこそ、本物の歌手。
昔は、みのもんたの番組の代わりにこのような歌で小説より奇な事件を想起しつつ嘆いたり怒ったり怖れたりしていたのだろう。世も末的な事件が起こるといよいよ社会の劣化が極まったと思いがちだ。でも、そこは変わらぬ人間の社会だもの。昔から、いや始原から世も末であったのだ。
ジューン・テイバーは、歴史と伝承に埋もれたそんなハンパねえ世も末事件を静かに歌い紡ぐ。そこから、まさに人の業とでも言うべきものを我々に感じさせるために、彼女の少し擦れ、低く曇った声に勝るものは無いだろう。
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2007.09.17 Monday 09:34
まだ萌える、バッハ。
Bach : Works for Trumpet - Alison Balsom
懲りずに続けます。今度は、トランペットです。
トランペットとオルガンと言えば、かのモーリス・アンドレか、というところですが、Alison Balsom さん、どうでしょう。細切れ名曲をあえて抑えて、結構充実したラインナップ。BWV972の全楽章からスタート。ヴィヴァルディの L'Estro Armonico の9番を原曲とする明るい曲でトランペット向け。後半は今度はマルチェロのオーボエ協奏曲をアレンジした BWV974 で始めるという凝った作りですが、これってLP時代のアルバム作りのような。
無伴奏チェロやヴァイオリンからも3曲入ってます。BWV1055(チェンバロ協奏曲4番)も全楽章たっぷり。
BWV1067(オーヴァチュア2番)のバディネリで妙技を聴かせた後は、ロ短調ミサのアニュス・デイを配して静かに締めるという心憎い気配り。
ちゃんと、「トランペットを通じてバッハを堪能させる」というあるべき姿になっています。
デビュー・アルバムは、スヴェーリンクに始まり、バッハやパーセルを経て、メシアンやエベンまで到達すると言う、更にマニアックなものだったのですね。
Alison Balsom 公式サイト
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2007.09.16 Sunday 08:00
萌える、バッハ
男子のジャケ買い指数を一気に高めるカバー・フォト。以前、塔印音盤店がかなりプッシュしていたらしい。デビュー・アルバムの無伴奏ヴァイオリンからコンチェルトまで、とにかくジャケ買いを誘発して来たララ・セイント・ジョンさん、このアルバムではワールド・ミュージック風味のクロスオーヴァーに仕上げている。と言うことで、お怒り、お嘆きの諸兄も多数いらっしゃることでしょう。まあ、これはこれでいいんじゃない? とも言えるが、やはりララさんには、真っ当な演奏をイケてるビデオで見せて欲しいもの。
そして、こういうアルバムより無伴奏の続編を希望するものである、と書こうとして彼女の公式サイトを見てみたら、何とちゃんと来月SACDハイブリッド盤が発売予定になっているではないか。iTunesで先行発売と言うけれどAACの圧縮データでは萌え要素はどうなるのか、と激しく問いたい。
公式サイトでバッハのコンチェルトなどのビデオ・クリップを観ることが出来る。世の男子中学高校の音楽の授業では是非これらの映像を流して純情な少年たちを悩殺し、鉄は熱いうちに鍛えよの謂い通り、そのままロ短調ミサやマタイ受難曲を刷り込んで頂きたいものである。
(カバー写真借りてて言うのもなんだけれど、品切れになった時の価格はひどいものがある。HMVなら今でも廉価盤価格で売ってるのに。)
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2007.09.15 Saturday 10:23
アリソン・クラウス、聴くトラックは玉ばかり
Alison Krauss : A Hundred Miles or More
久しぶりに米アマゾンを見ていたら、アリソン・クラウスの新譜が出ていた。他にいくつかカントリー、フォーク等のアルバムを混ぜて注文。ジャケット写真が癒し系に振れてますね。そこで見つけた小さな文字の A Collection なる副題が・・・ なーんだ、ベスト盤じゃん。まあ、落ち着け。歌詞カードを見れば5曲が Previously unreleased だし、それ以外もアリソン自身のアルバムからの再録ではなく、彼女がゲストで参加した他のミュージシャンのアルバムから集めてあり、聴いたことの無いトラックの方も多かった。
アリソンの歌は本当に唯一無比。ミッドウェストのトウモロコシ畑の上をかすかに吹いては留まる風のように静かに開放的。湿り気を含んだ声は人の温もりを感じさせながらどこか天上的。全てのトラックがこれ程「玉」ばかりというアルバムにはそうは出会えない。そして歌が終わった後の沈黙も雨上がりの草の匂いのように心を満たす。
ブラッド・ペイズリやジョン・ウェイトのアルバムにゲストに呼ばれたトラックも入っているけれど、こうして聴いていくとアリソンがホストになっているように聴こえる。チーフテンズやナタリー・マクマスターとの共演では Celtic な色合いを強める。
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2007.09.14 Friday 23:24
バッハ 地味化計画
Bach: Alio Modo (Fretwork)
バッハのオルガン曲をオーケストラで色彩豊かに装った Bach Plus 的な演奏は多々あれど、ヴィオール・コンソートによる演奏というのは珍しいのではなかろうか。Bach Lite というか・・・ オルガンよりもずっとマットな響きでいかにも地味〜なのだが、この縮小感が心地良い。幻想曲ト長調から始まり、前半のヤマはパッサカリア。バッハがジョン・ダウランド方面を振り返っているのか。しみじみ味わえるバッハ編曲モノ。「聖アン」のフーガの部分とか、平均律から3曲ほど、そして「音楽の捧げもの」の6声リチェルカーレ。じわりと響くこれらの演奏、原曲の別の姿を発見する楽しみに満ちている。Alio modo にひっかけたタイトルにも座布団1枚か。
3000円超というのも冗談みたいな値段だが、犬マークでも2000円以上になってしまってる。
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