MELI-MELO MELOMANE

音楽愛好家的日常
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セレブリエール ストコフスキー バッハ
/ Classical /
LINK ストコフスキーの編曲を他の指揮者が演奏したものはいくつかあるが、4枚もCDにしているのはセレブリエールくらいだろう。うち、バッハは2枚。オール・バッハ・プログラムというわけではなく、ヘンデルからハイドンまで混ぜているが、メインはバッハ。第2巻の曲選択のほうがポピュラーな曲が多い。ヘ短調のチェンバロ協奏曲のアリオーソだとか、「目覚めよと呼ばわる声す」に「人の望みの喜びよ」「我、汝を呼ぶ、主キリストよ」という具合。ストコフスキーの演奏自体はもっとすっきりしていたような気がする。

特におすすめは、平均律第一巻24番のプレリュード。昔のNHK FM「名演奏家の時間」のテーマ曲でもあった。やはり弦楽合奏で低音のピツィカートが印象的だったが、あの演奏は若杉弘とN響によるものだった(編曲も若杉だったと思うが確かではない)。

バッハ以外でも、パレストリーナのAdoramus Te Christiとか、バードのソールズベリー伯のパヴァーヌとか盛り沢山。バードのパヴァーヌも昔のNHK FM番組で使われていた(番組名は「FMリサイタル」だったろうか。その時の演奏はコリン・ティルニー)。原曲の演奏も意外にCDが少ない。ギボンズにも同名のパヴァーヌがある。 ボッケリーニのメヌエットだとかハイドンのセレナーデなんかが入ってきてちょっと散漫になるけれど、最後は平均律第一巻2番のフーガで締め。
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アントネッロのヴェスプロ
/ Early Music /
LINK
Monteverdi: Vespro della Beata Vergine 1610 - 濱田芳通、アントネッロ、アンサンブル・オルフィカ (Anthonello Mode AMOE-10007/8)

今年の6月に聖母マリア大聖堂で行われた、目白バ・ロック音楽祭オープニング・コンサートのライブ録音。濱田芳通さん率いるアントネッロによるヴェスプロのCDは既にあったようだ(スタジオ録音か?)。日本人としてはBCJも録音している。

このホヤホヤのアルバム、だいぶ風変りな演奏と言うことも出来る。

西山まりえさんが弾くメルーラのオルガン曲からスタート。崩したようなヴェルスス朗唱に、「ああ、この手で来るのか」と身構える。

アンティフォナを加えて典礼的に構成しているのはカテドラルでの生演奏ということもあってこれでもいいのか。ホールでの最初の録音でもアンティフォナ込みだそうなので、彼らのスタイルなのかも知れない。

アンサンブル・オルガヌムみたいなコブシ込みメリスマを聴かせたりして面白いことは面白いのだが、腕達者な器楽に比べると声の方がどうも散漫な印象。ところどころではっとする効果的な場面もあることはあるのだが、とっ散らかった感じが拭えない。

これでは、ヴェスプロを聴く喜びと言うか満足感が得られないのではないかと心配しながら1枚目を終える。

ところがDisc 2に入り、ソナタの Sancta Maria ora pro nobis、どう言うわけだかフォーカスが効いてくるのだ。空気が違う。世俗にまみれた中から、突然、祈りが立ち上ってくるようだ。そして圧巻はマニフィカート。その導入、Magnificat anima mea には思わず息を飲む。光の効果。まさにカラヴァッジョの時代の音楽である。1610年はカラヴァッジョが死んだ年でもある。その後、カラヴァッジョ流は北方バロックへ影響を与え、レンブラント等につながってくることを思い出す。

器楽、声楽ともにマニフィカト全曲、すばらしい密度とテンションの演奏で、最後に「。」の如くアンティフォナが唱されて終わる。

それにしても一筋縄では行かない人々である。
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Cherryholmes賛江
/ Country/Bluegrass /
cover photo


人気上昇中のブルーグラス・バンド、Cherryholmes が2作目をリリース。カヴァー写真の過剰なデザインは、ご当地音楽ではよくある事ですのでご了承下さいです。メンバーはみんな家族という、いわゆるファミリー・バンド。

ブルーグラスと言ってもバーボンをストレートでがぶ飲み出来なきゃ聴けないような泥臭い音楽かと思ってはなりません。Cherryholmes は、軽さと渋さ、洗練と泥臭さ、陽気さと陰影を絶妙にバランスした、実は結構ユニークなバンドではないでしょうか。

ブルージーな Black and White から、これぞブルーグラス的無窮動 The Nine Yards へと進んでいくと、スタジオ録音でこれならライブで聴いたら昇天しそうです。

大地のところどころに現代文明がなすりつけられ、どこに行っても似たような郊外の住宅地やショッピング・モール、さもなくばトウモロコシ畑が広がるようなアメリカの田舎が、実は地球上でもっとも詩情溢れる場所ではないかと思えて来ます。

ポピュラー音楽の一分野になっているようなカントリー・ミュージックと比べると、ある種フォーカスを絞られて様式化したブルーグラスの方が、アメリカ音楽の普遍的なコアの部分に通じているような気がします。

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ケイジャンゆたりのたり
/ Country/Bluegrass /
cover photoEvangeline Made, a tribute to Cajun Music (Vanguard 79585 2)

昨日の Adieu False Heart でケイジャンに開眼したわけではないが、たまたま今日は棚からふと見つけて、あれ、こんなの持っていたのかとプレイヤーに乗せた。リンダ・ロンシュタットとデュエットしていた Ann Savoy がここではプロデュースを行い、様々な歌手がケイジャン・ソングを歌っている。リチャードとリンダ・トンプソン、ジョン・フォガティ、マリア・マッキー、パティ・グリフィン・・・ リンダ・ロンシュタットもアン・サヴォイと2曲。しかも全員フランス語で歌っている。音楽のスタイルは更に田舎風で、リンダとのデュエットのようなフォークっぽい曲より、ズン・チャッチャでゆるーい感じの曲が多い。

ちょっと聴くと、いやあこれは退屈しそうだなあ、勘弁だなあと思うのだが、このたるいノリに身を任せているといつの間にか体が麻痺して時の経つのも忘れ、気付くとCDが停止しているという不思議ダウナー系である。

これを聴いて真綿に包まれるようにのたありとするのは、実は究極のロハス的贅沢なのかも知れない。
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ミシシッピの木陰で
/ Country/Bluegrass /
cover photoB000FP2IYQLinda Ronstadt, Ann Savoy: Adieu False Heart (Vanguard 79808 2)

ポップ、ロックから始まって、カントリーやメキシコ歌謡のようなルーツ音楽でも独特の存在感を示すリンダ・ロンシュタットのアルバムの中でも異色のタイトル。Ann Savoyとのデュエットでケイジャン・フォークの魅力をたっぷり聴かせてくれる。ギターやバンジョーの音も、カントリーやブルーグラスで聴くものとちょっと違うような気がする。

何より、最初の歌の Adieu False Heart から始まる湿ってブルージーな節回しに心が引きまわされるたり、いくつかのはんなりしたフランス語の歌に安らいだり。ユニヴァーサルなアメリカ音楽にもこれらの要素が確実に一部として流れ込んでいるのだと思わせる、これこそルーツ・ミュージック。

曲自体はケイジャンのみならず、リチャード・トンプソンやビル・モンローのものまで、つまりイギリスのフォークやブルーグラスまで歌っているわけですが、そもそもケイジャンを意識しなくても、このデュエットは他に聴いたことが無い歌の世界を体験させてくれる。

別にジャンバラヤやケイジャン・チキンじゃなくても、いや、芋羊羹でも食べながらのんびりお茶飲んで聴いてみましょう。

cover photoB000H5U0L2国内盤もあります。
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いい人なんだけどねえ
/ Classical /
cover photoB000K2UFQWBach: Goldberg Variationen - Sax Allemande (Farao Classics B108024)

サキソフォンによるバッハ、今度はゴールドベルグ変奏曲。Sax Allemande という名前の通りドイツ人(たぶん)3人組の演奏は清水靖晃のチェロ組曲とは全く違う世界である。何と言うか、人好きのするバッハ。先ずはサックスの音色自体に起因するのだろう、滑らかで洗練されていながら、牧歌的なボケをかますような風情。毒舌やちょっとしたマジ切れも憎めない。明るく社交的な振舞いの中にも、ふと眼差しに見せる憂いの光。

総じてべきょべきょとした音が軽々と疾走していくのだが、まあ、ほにゃらとした気分になれる。仕事もてきぱきこなして、敵も作らない、ユーモアもあって、いいひと。

バッハは楽しいね。

いい人だよ。いい人なんだけど、ねえ。

けど、ねえ、って、何さ。
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身も蓋も無く颯爽と
/ Classical /
cover photoB0002IJNNK
Schubert - Symphony in C major "Great" : Bertrand de Billy, RSO Vienna (Oehms OC339)

90年代からパリを中心に活躍し始め、今やウィーンで押しも押されぬ人気を博しているベルトラン・ド・ビリーの初めての交響曲録音であるシューベルトのグレイト。個人的には、この曲に限らずシューベルトは大の苦手で、早く言えば「どこがいいのかさっぱりわからん」状態なのだが、時々手出しをすることもあるのだ。

私にとって「古楽後」であることは、もうこういう曲を聴く時の必要条件になってしまった。巨匠達の昔の演奏は、悪いけれど気の抜けたビールのように感じられてしまうのだ。残念と言えば残念なことだ。

軽々としたテンポで駆け抜ける第一楽章。テンポだけじゃなくて、ノイジーな音やアーティキュレーションもピチピチしてて気持ちいい。楽器のバランスが面白いところがあって、ふと耳がそばだつ。

第二楽章もルンルン気分(死語)のアンダンテ。これなら俺にでも聴ける! 心を込めて歌うよりも、こんな風に素っ気無いくらいの即物的な美音を連ねるほうが、この作曲家の凄味が分かりやすいんじゃないか。

スケルツォ。これも退屈なんだよなあ、と思って身構える。が、始まると悪くない。トリオへの非連続な接続感も刺激的。そして最初のテーマに戻って、終わる前に驚くような処理のフレーズがあったような。さて、ここで終わっときゃいいのに、この後、フィナーレがあるんでしょう? シューベルト、まったくもう、である。

そのフィナーレ。普通の演奏では、もう勝手にやってて、という感じになるところである。盛り上がればいいってもんじゃないでしょ、と言いたくなるところである。ところが、どこかショスタコーヴィチの交響曲の作為的な躁状態すら思い出させるこの演奏は、最後まで耳を離してくれない。

何と、シューベルト退屈人間の私がダレずにトイレにも行かずに聴いてしまったではないですか。しかも、繰り返しもきちんとやってるからか、こんな快速演奏なのに全部で58分以上かかっていて普通より長時間聴いていることになるのだ。それでも退屈を感じなかったのは、決してこの演奏がすっきり爽やか快適演奏だからではない。むしろ、その身も蓋も無い美しさによるものなのだ。
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スコットランド・ピアノにハマる
/ Ireland/Scotland/Celtic /
cover photoB000HDR9FO
Sandy Meldrum : Scottish Piano Fusion (Greentrax CDTRAX298)

村の青年団の兄ちゃんがピアノに肘ついて笑っているようなカバー写真に「何じゃコレ?」と素通りする事なかれ。

スコットランド音楽をピアノで弾くなんて、砂糖漬けのメロディーがひたすら耳に心地良く流されるムード音楽かニューエイジみたいなんじゃないかと素通りする事なかれ。

アコーディオンやバグパイプをバックにちゃんとダンス・セットを弾いているのだ。ピアノで。ズンチャッズンチャッじゃなくて、きちんと跳ねている。タダモノではない。名アコーディオン奏者フィル・カニンガムの親戚筋だと言うサンディ(男性です)のピアノはかそけきバラードからジャズ・テイストまで、行くところ可ならざるは無し。ちゃんとノせ、ちゃんと楽しませてくれる。

その一方で、ムード的に流しやすいソロによるスロー・チューンもどこかに軽やかさを秘めてベタつかず、次のやはりソロによるダンス・トラックにうまく引き継がれ、極上のダンス・セットをピアノだけで再現してしまうのがサンディーの最骨頂。

ヘッドフォンで聴くと、脳内麻薬状物質の分泌が促進されそう。

まさに、ワン・アンド・オンリー。CDは外見で判断しちゃいけない。
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無伴奏サキソフォン組曲
/ Classical /
bach_shimizuB000NVTI4ACELLO SUITES - YASUAKI SHIMIZU & SAXOPHONETTES (Victor Entertainment VICP63779/63780)


いつの間にか2枚まとめて一組になっていた。

バッハの面白い演奏のなかでも屈指の、サックスによる無伴奏チェロ組曲。しかも全曲。専門的にはいろいろ注文を付けられるのかも知れないが、やはり何度聴いても面白いものは面白い。こんな演奏が、いきなり地下鉄の通路の奥から聴こえて来たらどうだろう。重音のところは多重録音で処理しているから、一人では吹けないけれど。

それにしても、同じような試みが他にも有りそうだが、何故かバッハ無伴奏のサックスと言えば清水なのである。世のサックス奏者はバッハを吹かないのだろうか。たて笛ですらいくつか録音があるのだから、サックスのバッハなんかもっとあってもいいと思うけれど。売れないというような商業的理由では無かろうし、技術的要因というわけでもなさそう。多重録音だけでなく空間の残響自体も利用したという仕掛けのオリジナリティゆえ?

そもそも、この演奏は単に違う楽器で演奏したというより、全く新しい曲が生まれているような気がする瞬間がある。たぶん、それもバッハの音楽のせいだと言うことにしてしまおう。
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スコットランドの島唄
/ Ireland/Scotland/Celtic /
cover photoB000NA2PRSJulie Fowlis : Cuilidh (Spit & Polish SPIT032)

スコットランドというとハイランド地方のイメージが強いけれど、ヘブリディーズ諸島も忘れてはならない。Skye Boat Songで有名なスカイ島やメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」の舞台があるのが、インナー・ヘブリディーズ。その北西側にあるいくつかの島々がアウター・ヘブリディーズ。Google Earthで「降りて」みると、僻地マニアの血が騒ぎそうな光景が想像される。そう言えば、欧州に行くのにPolar Routeがあった頃、空の上からこの島々を眺めたことがあった。

吸い込まれそうな瞳が印象的な、Julie Fowlis は、アウター・ヘブリディーズの北ウィスト島の出身。航空写真で見ても家の数が数えられるんじゃないかと言うくらい人口密度の少なそうな島である。スコットランド各地のメンバーを集めた Dochas というグループで人気を博し、この Cuilidh は2007年に出た、ソロ第2作。カバーに書いてあるように、treasury とか sanctuary といった意味のゲール語らしい。

全てゲール語で歌われる歌は素直でトラディショナルな味わいと新鮮な仕上がりが良い塩梅。バックもアコースティック楽器だけのアンサンブルでありながら、アレンジ含めてこちらもフレッシュな響き。人気が出ると大勢の観客に届くように(かどうかわからないが)電気楽器を多用し始め、それが音楽のスタイルも変えていくという道を辿るミュージシャンが多い中、こんな風にアンプラグドのまま行ってくれれば有難いのだけれど。

何と言っても、何の押し付けも気負いも飾り気も無く、こぼれ落ちるように紡ぎだされるこれらの歌との出合いに静かに感謝したいという気持ちになる。

Julie Fowlis 公式サイト

Dochas 公式サイト


cover photoB000DXS9YI
Julie Fowlis : mar a tha mo chridhe (SPIT031)

こちらが2年前のソロ第1作。多くの場合ジャケ買いは後悔と怨嗟をもたらすが、この2枚だけは幸運の女神に感謝することであろう。無理に比べると新作の方がいろいろな要素の溶け合い方がちょっと深まったような気がしないでもないが、基本的には全く同じ路線。そもそも円熟ということはあり得ないのだ。紡がれては消えていくような歌なのだから。
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